内科・消化器内科・肝臓内科
便秘とは
便秘とは、便がでにくい状態をさします。一般的には、1週間に3回以下の便しか出ない、または排便が困難な状態を指します。便秘は誰にでも起こり得るものであり、食物繊維不足、水分不足、運動不足などが原因となる場合がありますが、病気や特定の薬剤が原因となることもあります。
1. 便秘の種類
器質(きしつ)性便秘
大腸がんなど腸の疾患が原因となる便秘で、神経疾患や薬剤性のものも含まれます。
腹部にガスが溜まるなど腸閉塞が疑われる場合は、大腸の精密検査が必要です。
食事性便秘
食事制限(ダイエットや偏食)により、食事量や水分量が不足することで起こります。
機能性便秘
腸管機能の異常による便秘で器質的な異常はありません。
- 弛緩(しかん)性便秘
腸の蠕動(ぜんどう)運動が低下することで起こります。頻度が高いタイプです。 - 直腸性便秘
便が直腸まで達しているにもかかわらず、便意を感じずに留まることで起こります。高齢者に多く見られます。 - 痙攣(けいれん)性便秘
腸の動きが過敏になり、便の移動が妨げられることで発生します。ストレスなどの自立神経の異常が関与することが多いです。

2. 年齢や性別による違い
便秘は男性よりも女性に多く見られます。60歳までは女性に多い傾向がありますが、80歳以上では男女差がほとんどなくなります。
高齢者が便秘になりやすい理由として、食事や生活環境の変化(退職など)、運動量の減少、他の病気の影響などが挙げられます。特に女性では、ホルモンの変化が影響すると考えられています。
若い女性に便秘が多いのは、女性ホルモンが腸の働きを鈍らせることや、運動不足、ダイエットの影響などが原因とされています。
3. 食事の注意
便秘の予防や改善には、規則正しい食事、運動、水分補給、そして適切な食物繊維の摂取が重要です。
食物繊維が不足している場合は、食事から適量を摂取することで改善することがあります。ただし、排便障害があり大量の便が溜まっている場合、食物繊維を過剰に摂取すると便秘が悪化する可能性があります。
食物繊維の種類と役割
- 水溶性食物繊維
水分を吸収してゼリー状になり、便を軟らかくして排便を促進します。 - 不溶性食物繊維
便の量を増やし、排便を促しやすくします。また、大腸内の腸内細菌を増やして腸内環境を改善します。
食物繊維を多く含む食材
- 水溶性:海藻類、果物、芋類(こんにゃく、山芋)、野菜(オクラ、モロヘイヤなど)
- 不溶性:豆類、根菜類、きのこ、雑穀、繊維の硬い野菜(たけのこなど)
4. 治療
基本的には、食事や運動など生活習慣の改善を優先します。それでも便秘が改善しない場合、内服薬を使用することがあります。
主な処方薬
- 塩類下剤:酸化マグネシウムなど
- 刺激性下剤:センノシドなど
- 漢方薬:麻子仁丸、大黄甘草湯など
市販薬も使用可能ですが、センナや大黄などの刺激性下剤は頻繁に使用すると耐性が生じることがありますので注意が必要です。
新しい薬剤
最近では、以下のような新薬も使用されています。
- ルビプロストン(アミティーザ)
- エロビキシバット(グーフィス)
- リナクロチド(リンゼス)
- ポリエチレングリコール製剤(モビコール)
薬には副作用があるため、使用については医療機関に相談することをお勧めします。