長野県茅野市の内科・産婦人科、消化器内科|平出クリニック

内科・消化器内科・肝臓内科内科・消化器内科・肝臓内科

糖尿病

1. 糖尿病とは

糖尿病とは、血糖値(血液中のブドウ糖濃度)が病的に高い状態をさす病気です。

体内では、血液中をブドウ糖が全身をめぐり、全身の細胞に取り込まれ、エネルギー源として使われています。血糖値は、食事をすると増えますが、その多くはすい臓から分泌されるインスリンというホルモンの働きによって肝臓・筋肉・脂肪組織に移動し利用されます。

その結果、血液中のブドウ糖が減ります。ところが、インスリンの仕組みがうまく働かないために、ブドウ糖が肝臓などに取り込まれず、血液中に増えてしまうことがあります。このような原因で慢性的に「血糖値が高い」状態を糖尿病といいます。

血糖値が高い状態が続くと、ブドウ糖が全身の血管で炎症を生じ傷つけてしまいます。その結果、「糖尿病性網膜症」「糖尿病性腎症」「糖尿病性神経障害」が生じたり、動脈硬化が進行して「脳梗塞」や「心筋梗塞」などを引き起こしやすくなったりします。

 

細胞にブドウ糖を取り込むインスリンの仕組みがうまく働かなくなる原因は2つあります。

1つはインスリンの効きが悪くなることで、これをインスリン抵抗性といいます。
多くの場合、肥満がその要因です。肥満になると、インスリンが多く分泌されても、脂肪組織から出る悪玉物質が肝臓、筋肉、脂肪組織でインスリンの効きを邪魔するのです。

もう1つの原因は、すい臓からのインスリン分泌の低下です。これには遺伝的体質や加齢が影響します。

糖尿病には1型と2型があり、約95%を占める2型糖尿病は、インスリン抵抗性とインスリン分泌低下の2つが重なって起こり、多くは中年以降に発症します。一方、1型糖尿病は自己免疫疾患などによってインスリンを分泌するすい臓の細胞が壊れて起こり、小児の発症も少なくありません。

アメリカの糖尿病患者は、肥満度を表すBMIが平均30を超えていて、かなりの肥満です。
ところが、日本の糖尿病患者のBMIは平均25弱で、肥満の一歩手前くらいです。

なぜこれだけの差があるのかというと、日本人のインスリン分泌能力が欧米人に比べて低いことが原因と考えられています。

日本人は肥満にいたらなくても、小太り程度でも糖尿病になりやすいのです。
特に、20歳の時の体重と比べて10キロ以上増えている場合は、糖尿病の危険信号と言われています。

2. 肥満と糖尿病

肥満とは、体内の脂肪細胞に過剰に脂肪(中性脂肪)がたまることです。

この状態を何らかの仕組みで脂肪細胞が感知して、アディポサイトカインと総称されるさまざまな生理活性物質を分泌します。

アディポサイトカインには善玉(アディポネクチンなど)と悪玉があります。脂肪が脂肪細胞に多くたまると善玉は減り、逆に悪玉が増えて、血糖値を下げるインスリンというホルモンの作用を抑える「インスリン抵抗性」という症状を起こします。

はじめは膵臓のβ(べーた)細胞からインスリンをたくさん分泌することで血糖値を下げようとしますが、その状態が何年か続くと、遺伝的にβ(べーた)細胞が弱い人は糖尿病を発症します。

3. 糖尿病の診断

空腹時の血糖値が126mg/dl以上、食後血糖200mg/dl以上を糖尿病と診断します。

また、HbA1c 6.5%以上も糖尿病の可能性が高いです。

4. HbA1c(ヘモグロビン エーワンシー)とは

血糖値とは、血液中のブドウ糖濃度です。食事により大きく変動します。
一方、HbA1cは1回の食事では影響を受けず、変動はありません。3から4ヶ月間の血糖の平均値を反映しており、診断のみならず、治療効果の判定に有用です。

HbA1cは赤血球中のヘモグロビン(Hb)にブドウ糖がくっついた化合物です。100個のHbの内、いくつブドウ糖が結合してHbA1cになったのかを測定して表示します。
このため単位は%で表しています。HbA1cの基準範囲は、4.9から6.0%です。

赤血球の寿命は、約4ヶ月間です。
そのため、過去4ヶ月間の血糖値の変化の影響を受けることになり、高血糖が続くとHbA1cは高値になります。
特に、検査前の血糖値の影響を強くうけ、最近1から2ヶ月間の血糖変動の指標と考えられます。

糖尿病の治療を受けている方が、むやみにHbA1cを下げればよいということではなく、年齢、罹病期間、合併症の有無、低血糖の危険性などを考慮して個別に設定することが大切です。

5. 治療

高カロリー食、多量飲酒、運動不足などがあれば、生活習慣の改善が基本です。
血糖値が200mg/dlを超えるような肥満の人でも、やせればかなりよくなり、投薬量も少なくすみます。

個人差があり、数値による線引きはむずかしいですが、少なくとも標準体重近くまで戻せば、インスリン抵抗性は改善します。

動脈硬化の炎症・進展を考えれば、空腹時血糖値110mg/dl以下、HbA1cが6.0%以下を目指しましょう。
高血糖が続く場合は、投薬が必要となります。糖尿病は、危険な病気です。早めの治療・対策が必要です。