内科・消化器内科・肝臓内科
ヘリコバクターピロリ菌
この菌が発見される以前は、強い酸性の胃の中に細菌が生息するとは誰も考えていませんでした。
その後の研究でピロリ菌が胃がんなど色々な病気の原因だとわかり、ピロリ菌を発見したオーストラリアの医師にはノーベル賞が授与されました。
ピロリ菌の感染経路ははっきりとは解っていませんが、口を介した感染や幼少期の生水摂取が大部分と考えられています。
そのため、上下水道が十分に普及していなかった世代の人の感染率が高く、団塊世代以前の感染率は約80%と高い一方で、若い世代の感染率は低くなっています。
この菌の感染は慢性胃炎を起こします。たいていの人は感染しても問題がないことも多く、全員に症状が現れるということはありません。
慢性胃炎が持続し強い炎症や免疫反応が起きてくると、胃潰瘍、十二指腸潰瘍や、胃癌を引き起こします。
症状が出るのはピロリ菌が原因で何らかの病気が発症したときのみで、それもピロリ菌保菌者の約3割程度と言われています。残りの7割の人はピロリ菌が胃に定着した 状態でも何の症状も現れません。
また、難治性のじんましんや、特発性血小板減少性紫斑病など、胃とは違う場所の病気を起こすものとしても知られています。
感染の診断法には、(1)内視鏡による生検を必要とする検査法として、迅速ウレアーゼ試験、鏡検法、培養法、また(2)内視鏡検査を必要としない非侵襲的検査法である尿素呼気試験、抗ピロリ抗体測定(血清、便、尿)があります。
ただし、どの検査にも長所と短所があり、複数の検査を組み合わせると診断の精度があがるといわれています。
内視鏡による検査は侵襲的ではありますが、診断率が高いとされています。
非侵襲的検査も検出率は95%程度ありますが、ある種類の胃薬(プロトンポンプ阻害薬)などを服用されている方は、ピロリ菌が感染しているにもかかわらず陰性とでることがあります(偽陰性)。
当院では内視鏡による診断と血清抗体を第一としていますが、これは、ピロリ菌の存在診断のほかに、胃がんの除外と胃粘膜の性状(慢性胃炎の程度)を観察できるという利点があるからです。
感染していた場合はピロリ菌除菌治療を受けることができます。それにより胃がんの発生の予防が可能となります。
除菌は、胃薬1種類と抗生物質2種類を1週間内服します。
除菌成功率は90%程度です。
1回目の除菌が失敗した場合、抗生物質を変更して2回目の除菌をします。
この2回の除菌でほとんどが除菌可能となっています。
除菌治療は2回目までが保険診療の適応となります。
除菌療法には副作用もありますので、もし感染していた場合は、除菌治療の実施については相談して下さい。